建物紹介

建物紹介

軒の教会―教会建物の紹介

  • 東八幡キリスト教会は、創立60年を記念して新教会堂の建築を行いました。設計を担当くださったのは、手塚建築研究所(手塚貴晴・由比設計士:下記参照)です。2014年8月に完成しました。

    この教会は、「軒の教会」と呼ばれています。日本の建物から「軒」が無くなりつつあります。「軒」は、内でもなく、外でもない空間です。それは、人と人とが出会う場所でもありました。この「軒」が町中から姿を消しつつあるのは、単に土地が狭いことやデザインの問題ではないと思います。それは、今が他者との出会いを避ける時代になりつつあることを表しているように思うのです。

    東八幡キリスト教会は、出会いを喜び、他者と共に生きることを目指す教会です。教会活動の中で、あるいはホームレス支援活動の中で繰り返し私たちは、出会い、感謝し、ある時は傷つき、それでもなお、お互いの存在を喜んで生きてきました。新教会堂である「軒の教会」は、そのような東八幡キリスト教会のあり方を体現するものとなりました。

    新会堂は、2015年グッドデザイン賞や、第28回福岡県美しいまちづくり建築賞などを受賞しました。『新建築』や『Casa BRUTUS』などの雑誌、テレビ等でも紹介されています。

FIRST FLOOR
  • 1. 入口のベンチ
    旧会堂から引き継ぎ

    玄関の軒には、だれもがくつろぐことができるベンチがあります。これは旧礼拝堂のベンチでした。先達から継承された信仰を引き継ぎ、新たな歩みを始めます。

  • 2. 入口の定礎石
    「幸福なるかな、貧しき者よ」

    玄関横に定礎石があります。「幸福(さいわい)なるかな、貧しき者よ」(ルカによる福音書6章)とのみ言葉が刻まれています。東八幡キリスト教会の歩みの中で証しされた神の真実です。地元の書家である栗原光峰先生が書いてくださいました。

  • 3. 大軒(おおのき)
    玄関からホワイエへ続く大軒

    建物の中心は礼拝堂です。礼拝堂を囲むように軒が広がっています。「軒の教会」の真骨頂は玄関前の軒から続く長さ20メートル以上の大軒です。大軒の先には、大きな窓があり四季折々の緑が楽しめます。

  • 4. 一つの空間
    礼拝堂から、大軒へ、そしてホールへ

    礼拝堂後方の折れ戸を全開すると大軒、ホールへとつながる大きな空間が生まれます。最大300名が利用できます。礼拝においてみことば(神のことば)をいただき、その後、ホールにて共に食事をいただく。「神のことば」と「パン」が繋がって一つとなります。

  • 5. 礼拝堂
    大きな空間と四方の天窓から差す光

    礼拝堂は、天井の高さ8メートルの正方形の空間となっています。四方には天窓があり、光が時間と共に様子を変えながら降り注ぎます。礼拝堂及び建物全体は段差のないフラットな構造です。

  • 6. 浸礼槽
    低みに下るバプテストリー

    キリスト者として生きることを決意した人は、バプテスマ(一般には洗礼と呼ばれる)を受けます。キリストは、神であることに固守せず人間の姿になられ、低みに下られました。キリスト者になることは、高みに上るのではなく、低みに下ることを意味します。よって、礼拝堂のバプテストリーは、最も低い場所に設置しました。

  • 7. 浸礼槽
    低みに下るバプテストリー

    水は、床面いっぱいまで溜められ、床と水面が一直線につながり、大変美しい光景となります。バプテスマを受ける方と牧師がバプテストリーに入ると同時に水があふれます。恵みがあふれるイメージです。あふれた水は、周囲の「すのこ」部分に吸収され、水の流れ落ちる音が会堂全体に広がります。

  • 8. 記念室
    引き受けの無かった兄弟姉妹の場所としても

    記念室は礼拝堂とつながっています。生者と死者の主であるイエス・キリストの元で召された神の家族を覚えつつ礼拝をします。これまで東八幡キリスト教会は、残念ながら家族の引き取りの無かった方々の遺骨を引き受けてきました。今回の記念室には、誰でも入れる場所が確保されています。

  • 9. シェルター(緊急避難場所)
    引き受ける教会

    教会内にシェルターを設置しました。これまでも東八幡キリスト教会は、困窮状態の方々を引き受けて参りました。6名分の布団がひける広さの部屋となっています。

  • 10. シャワー室
     

    シャワー室、洗濯室などを準備しています。マタイによる福音書25章において「わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである」とイエスは語られています。東八幡キリスト教会は、この最も小さき兄弟の場所を提供できる教会になります。

  • 11. 庭石
    旧会堂から引き継ぎ

    玄関の軒下のベンチと同様、庭に点在する大谷石も旧礼拝堂の壁に使われていたものです。先達から継承された信仰を引き継ぎ、新たな歩みを始めます。

DESIGNER設計者紹介

  • 手塚貴晴・由比TAKAHARU/YUI TEDUKA

    一人でも多くの人々と共に生きようとされている東八幡キリスト教会の思想に感銘を覚え、我々は今回の新教会堂建設に関わらせて頂くことになりました。新しい教会堂の周りには大きな軒下空間を巡らせました。教会堂という神聖な空間との間に軒という誰もが足を踏み入れられやすい場を設け、一人でも多くの人々を神の家に受け入れたいという考えです。軒下には食事を囲んだ語らいと学びの場を設け、教会に通う方々が互いに支え合い高め合う場を作っています。

    礼拝堂は天空からの光によってのみ彩られる背の高いながらも飾りのない素朴な空間です。何も加えなくとも天空からの光そのものに十分な豊かさと恵みが含まれているという考えです。構造は木で作ります。日本の気候風土の中で注意深く作られた木構造が百年千年の時を超えることは、現存する歴史的建造物が証明しています。新教会堂が長い時代を超え、多くの人々、特に寄る辺なき人々の隣り人となり続けることを願っています。

    手塚建築研究所