元日の午後四時過ぎ震度7の地震が能登地方を襲った。家屋の倒壊、津波ですでに200人以上の方が亡くなり、災害関連死の危険が高まっている。突然の苦難に見舞われた方々のことを思い祈る。
東日本大震災の時、私が代表をしている「ホームレス支援全国ネットワーク」、「グリーンコープ生協」、「生活クラブ生協」の三者が協働し「公益財団法人共生地域創造財団」を立ち上げた。現在も現地にスタッフを置き被災者支援と共生地域創造に向けた活動を続けている。財団の活動理念は、①最も小さくされた人に偏った支援を行う。「公益財団なのだから偏った支援はいかがか」との意見もあったが現場は常に偏らざるを得ない。「出会った事実」を大切にし「出会った責任」を考える。行政の働きは平等性が問われるが民間は常に「偏りながら」やっていく。②起業と移譲。災害発生後、多くの団体が現地に入る。ある程度落ち着いた時点で大半は引き上げていく。財団の目的は「共生地域創造」にあるので当初からその地に留まり「起業」、つまり地域の社会資源を起ち上げ、それを地域に移譲するのだ。十年以上かかったが岩手県に財団から生まれた三つの団体が活動を継続している。その後も熊本震災、豪雨災害など頻発する災害にできる限り関わってきた。
私も先週現地に入った。支援体制を整えるためだ。金沢市内のキリスト教会の協力を得て事務局の開設と宿泊場所が確保できた。グリーンコープは早々に物資と運搬用の車両を準備。生活クラブからの物資も次々に到着している。物資の拠点を担ったのは北陸学院。以前講演に伺った縁でここ数年、抱樸や東八幡教会が修学旅行先となっている学校だ。今回も早々に連絡をいただき協働が始まった。財団、グリーンコープ、抱樸からの派遣スタッフが日々の活動に当たっている。
グリーンコープのスタッフからの報告に涙した。「避難生活をされている方のニーズに基づいて必要とされる物資を届けるようにしています。先日の出来事ですが(中略)避難されている小学生のお子さんを持つお母さんから『明日、娘が誕生日なのでケーキが必要です、そんなことは無理ですよね』と言われましたので、翌日避難所にいるお子さん全員分のケーキを届けました」。注文に合わせて配送することは生協の仕組みそのものだ。それを被災地で実現させる。これは東日本の時に財団が実施したスタイル。被災地では現場のニーズと関係なく支援物資が全国から届くことが多い。だから財団スタイルは大変喜ばれた。
さらに「ケーキの意味」である。単にケーキが食べたいというのではない。主食の確保もままならない避難所ではお菓子の入手が困難であることは事実だ。だがそういうことではない。「娘の誕生日のケーキ」なのだ。発災後「それどころではない」という思いが広がる。現に誰が命を落としてもおかしくない状況だった。しかし娘は生きている。この「生きているという事実」、「誕生日を迎えたという喜び」がこの状況において何よりも大切なのだ。それを娘と喜ぶことが出来る。この意味は大きい。現場のスタッフが出会った責任を果そうとしている。本当にすばらしく頭が下がる。
被害は深刻だ。先が見えない。しかし「誕生日ケーキ」を大事にする活動を続けたい。
この記事へのコメントはありません。