社会

6/19「なぜ、希望のまちは必要か-その③『アウトリーチ相談・よろず相談』-三度の飯より相談を

【何が問題か】 孤立の現実は、「相談しない」「相談できない」ということに現れます。
「なんでもっと早く相談に来なかったの」と言いたいことがあります。もっと早く相談していれば、これほど大変な事態にはならずに済んだのにということです。しかし、困っている人ほど相談に来ない、あるいは来られないのです。それは本人が誰にも相談できない状態、つまり、日ごろから孤立状態にあるからです。どれだけ優れた相談窓口を多数創ってもそこにつながらないと「存在しない」のと同じです。
従来、日本の社会保障制度は「申請主義」を原則としてきました。自分から「申請」しないと受け付けてもらえず、制度が利用できないことになります。最後のセーフティーネットと呼ばれる生活保護さえ「申請」が原則です。 また、相談において問題なのは、既存の相談窓口が制度毎の「縦割り」になっていることです。高齢者、介護、障害者、子ども、社会的擁護、DV、居住、就労など相談窓口は拡充されていますが、相談する当事者は、どこに行けば良いかわからない。そもそも「一つのことで悩んでいる人」はおらず、複合的な課題や問題を抱えているのが現実です。例えば「家がない」ということが一番大きな問題だとしても、その背景には失業があったり、家族問題を抱えていたり、借金があったり、あるいは障害があるなど複数の課題や問題が一人の人の中に存在します。それを制度毎に相談していくのは大変です。
【ではどうするか】 抱樸は、もともと路上に生活する人々の所にこちらから訪ねて行き、その場所で話を聴き相談に乗るというスタイルと取ってきました。つまり、「アウトリーチ」型の相談を基本としています。「ホームレス自立支援センター」には、巡回相談員が配置されており、日々、アウトリーチ型の相談を受け付けています。また、炊き出しにおいてボランティアがお弁当を片手に訪ねて回るということも続けてきました。訪ねて行ってすぐに相談が始まる場合もありますが、中には十年間通い続けて、ようやく相談が始まることもあります。私たちは、そんな場合でも根気強く訪ね続け、話を聴き続けました。「アウトリーチ」は、「手を伸ばす」という意味ですが、抱樸の相談スタイルは困窮者に限らず、子ども家族まるごと支援においても訪問型、すなわち「アウトリーチ型」を大切にしてきました。
もう一つの抱樸の相談の特徴は「よろず相談」です。対象者を制度の属性、例えば「障害者」という風に捉えず「名前のある個人」として出会います。その人の中にある複合的な課題を総合的、包括的に受け取り対応します。問題が総合的であるため、抱樸内の就労支援や居住支援などの専門部署と連携しつつ、他の機関との連携も行います。
【希望のまちで何ができるか】 希望のまちには、「総合的な相談窓口」が設置されます。ここにはアウトリーチをする「巡回相談員」と総合的に相談を受け付ける「よろず相談員」が配置されます。
 また、地域コミュニティ活動において日常的に地域の方々と交流することで、地域から心配ごとや相談ごと、あるいは「あの家のおじいちゃんを見に行ってくれないか」などのSOSにも対応します。専門機関による支援も重要ですが、解決後も支え合うことが出来る地域のつながりを創ることも相談事業所の大きな役割となります。

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