【何が問題か】「私たちは、つながりの中で生きている」―そう考えている人は少なくありません。しかし、日本社会は急激に孤立に向かっています。
国際調査では、「家族以外と付き合いがない人の割合」は、日本15%に対して米国は3%でした。日本は米国の五倍孤立しているのです。
これは単に人とのつながりが無くなっているだけでなく「単身世帯の増加」ということも影響しています。1980年(昭和55年)一番多かった世帯は「夫婦と子ども」で42%でした。第二位と第三位はほぼ同じ20%で「三世帯同居」と「単身」となっていました。しかし、この時の印象が強く、現在も「夫婦と子ども」が標準世帯だと考えている人は少なくありません。しかし現実は、違います。2020年(令和2年)一番多い世帯は「単身」で38%。「夫婦と子ども」の世帯は25%に留まっています。三世代同居は、7%。すでに世帯の約四割が単身世帯なのです。いるはずの家族がいないにもかかわらず、家族に対する依存、あるいは期待が高いのが、現在の日本の現実です。一方で多くの福祉等の制度は、家族が存在していることを前提として創られています。例えば介護制度なども、家族の支えがあることが前提となっています。今後、単身世帯はさらに増えると予測されていますが、それに社会が追い付いていないのが現状です。
【ではどうするか】抱樸では家族が担ってきた「日常生活支援」をいかに他人がサポートするかを考えてきました。障害や介護などの制度を利用するまではないが、従来家族が支えていたことを支える仕組みを創ってきたのです。そこでまず2005年「自立生活サポートセンター」を創設しました。これは自立支援センターや自立支援住宅退所後の方々に対して日常生活上の支援、見守り、相談、同行支援、金銭管理や服薬管理などを行う事業です。制度を使うまではないが、制度の手前、つまり、従来家族の支え合いで行ってきた部分をカバーする専門スタッフを置いたのです。支援期間は「出会いから看取りまで」。北九州市からの委託事業部分を含めて、現在八名のスタッフが市内在住の1,400人ほどの方々の日常に寄り添っています。抱樸ではこれを「家族機能の社会化」と呼んでいます。
第二に2013年、抱樸館北九州が開所したことに合わせて「地域互助会」が発足しました。これは2002年に始まった「自立支援住宅」に併せ創られた当事者組織「なかまの会」を中核として組織された「互助」のしくみです。
家族機能である「日常生活支援」を専門スタッフだけで担うことは大変困難です。お互いが支え合い、看取りまで行う。いわば「大きな家族」を地域に創る。それが「地域互助会」でありました。現在八幡東区を中心に250名ほどが加入され、相互に見守りや訪問・お見舞い、バス旅行やサロン活動などをしています。
特徴的なのは看取りと葬儀です。いずれも家族の役割とされてきた事ですが、それが叶わない人が多かった。「互助会葬」の実施は、「赤の他人が家族のように葬儀を出し合う仕組み」として全国から注目されています。すでに200名ほどの方々の葬儀が実施されています。
また、互助会葬の実施により「身寄りのない人にアパートを貸したくない」という大家さんの心配を軽減し、貸し渋りの防止にも役立っています。
(つづく)
この記事へのコメントはありません。