社会

6/17 巻頭言「参考人証言」その④

(2018年5月24日、国会参議院厚労委員会の参考人として証言をしてきた。これはその時の原稿である。当日は、時間切れで全部は話せなかった。)
 だから、対象者を絞らないことは、重要なのです。「地域共生」が話題になっていますが、私は「共生」の本当の意味は、「断らないこと」だと考えています。
 課題もあります。「社会的孤立とは何か」についての検討が必要です。孤立の社会的リスク、経済損失などをどのように測るのか。さらに伴走を軸とした支援理念の構築や人材育成をどうするのかも重要です。私が代表をしていますNPO法人ホームレス支援全国ネットワークでは、六年前から「伴走型支援士養成講座」という、勝手な認定制度をつくり、すでに千人近い人が講座を受講しています。
 第三のポイントは、今回の改正案で「居住支援の強化」が掲げられたということです。一時生活支援事業が強化され、地域における訪問や見守りが始まります。
 一時生活支援事業は、先にあった「ホームレス自立支援法」に基づく事業が引き継がれたものです。先に述べた通り、ホームレス支援の内容は多岐に渡ります。その中心的役割を担ったのが、「ホームレス自立支援センター」です。センター内には、アウトリーチ、自立相談、就労支援、居住提供、地域移行、生活保護利用など、様々な機能があります。ある意味、生活困窮者自立支援制度の総合性を体現している存在です。にも拘わらず、利用対象が「ホームレス」に限定されている。つまり、縦割り状態です。これは、正直もったいない。今後は、ホームレス自立支援センターの多機能性をさらに拡充し、対象者を限定しない総合的施設として活用すべきだと考えます。
 北九州の自立支援センターの費用対効果です。生活保護利用との対比でみると五割近い効果が出ています。当然、保護が必要な人には保護を用いているのは、言うまでもありませんが、居住の提供のみならず、就労支援、生活支援を一体的に行っているホームレス自立支援センターの効果は、非常に高いと言えます。
 また、今回、貧困ビジネス対策と単独居住が困難な人が利用できる「日常生活支援住居施設」が創設されることになります。
貧困ビジネスとして問題になったのは「無料低額宿泊所」でした。これは、名前のごとく「廉価な住居」であり、そもそも「支援」は前提となっていません。
 しかし、「単独居住は無理」で、かつ障害や高齢の制度を使うほどではない人々を、これらの民間団体が、「無料低額宿泊所」、つまり、第二種福祉施設で引き受けてきたのも事実です。全国の利用者は、1万5千人を超えています。
 ただ、「施設」と言っても、それは「通称」に過ぎず、何ら制度はなく、補助金もありません。抱樸も、無料低額宿泊所「抱樸館」を運営しています。これは、耐震、耐火、スプリンクラー付、24時間スタッフ常駐ですが、「制度」にはない施設で、公的な補助金はなく、経営は赤字が続いています。他の事業や寄付でその補填をしていますが、小規模の団体ではそれも叶いません。
つづく

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