社会

6/3巻頭言「参考人証言」 その②

(2018年5月24日、国会参議院厚労委員会の参考人として証言をしてきた。これはその時の原稿である。当日は、時間切れで全部は話せなかった。)
2、そのような現場から「生活困窮者自立支援制度」ついて三つのポイントでお話しをしたいと思います。
 第一は、この制度が「経済困窮」のみならず、「社会的孤立」に着目したことです。これは大変大きな事柄だったと思いますし、この国の制度で、「孤立」を明記したのは初めてではないかと思います。私たちは、活動開始時点から、「ハウス」と「ホーム」は違うと認識していました。「ハウスレス」は、「宿無し」に象徴される「経済的困窮」を指します。家がない、仕事がない、健康保険がない、お金がないなど、経済的困窮を象徴する言葉が「ハウスレス」です。
 自立後、アパートを訪ねます。仕事も決まり、野宿時代とは隔世の感があります。しかし、部屋にひとりぼっちおられる姿は、駅の通路にひとり座っておられた日の姿と何も変わらない。何が解決し、何が解決していないのかが問われました。自立が孤立に留まっていたのです。「畳の上で死にたい」と路上で語っていた方が、アパートに入られる。しかし、「これで安心」とはなりません。「俺の最期は誰が看取ってくれるだろうか」となります。そこには「ホーム」と呼べる家族や知人、地域や職場がありませんでした。私たちは、この「ハウスレス=経済的困窮」と「ホームレス=社会的孤立」を同時に解決できる仕組みが必要だと考えました。なぜならば、両者は相互に連鎖するからです。
 お金がないと進学、結婚、ネットを含めた情報取得が困難になります。つまり社会参加に支障が出るわけです。経済的困窮が社会的孤立を生む。まさに「金の切れ目が縁の切れ目」というわけです。
 一方、見落とされがちなのは、その逆。社会的孤立が経済的困窮を生むということです。なぜならば、「人は何のために働くのか」ではなく、「人は誰のために働くのか」ということが重要だからです。他者との関係が無くなると、生きる意味や就労意欲が失われます。多くの人が「離婚」や「家族との離別」をホームレスになった理由に挙げておられるのもこのためだと思います。こちらは、「縁の切れ目が金の切れ目」というわけです。経済的困窮と社会的孤立は相互に連鎖しているわけです。
 今回の改正案には、第二条に理念が加わり、「尊厳」「孤立」「連携」という言葉が明記されました。第三条の定義にも「関係性」が困窮の要因だと加筆されました。これは重要です。人口減少、少子高齢化などもあり、今後「孤立」はさらに問題となると思います。
つづく

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