物件を各地のパートナー法人が一括してサブリースするので大家は安心して貸すことが出来る。さらにサブリースは通常の家賃よりも低く借り上げることが出来るので、生活保護基準(最低家賃)で貸し出したとしても一定の差益が生まれる。これを法人が配置する支援員の経費に充当することが可能になり、一度限りではないサスティナブル(継続性のある)な仕組みが構築できる。
今後の事態を考えれば全国で150室は少な過ぎることは否めない。しかし、これは困窮者への緊急支援のみならず、「ポストコロナ」をにらんだ新しい社会モデルの実験だと考えている。結果をアドボカシー(政策提言)として国にも届けたい。そのために必要な資金の確保が必要だ。すでに1,500人を超える方々が応えてくださった。コロナ状況は、これまで隠されてきた現実を明確に私達の前にさらす。私達は、これを創造のチャンスに変えることが出来るだろうか。
4、箱と住宅と居住―縦割りを乗り越えるために
前回、コロナ禍が従前の社会が有していた矛盾や脆弱性を拡大露呈させていることを指摘し、その最大のものの一つが「住居と仕事の一体構造」であることを指摘した。すなわち、住み込み型就労は、経済が好循環時には便利なようだが、経済が停滞すると失業と同時に住居まで喪失するという構造が持つ危険性である。だから、ポストコロナの社会を考えるならば「住居と仕事の分離」を原則とすべきであると提案した。
だが、厳密に言うと「住み込み型就労」におけるは「住」は住宅とは言えない。社員寮に関する法律はなく福利厚生の一環として扱われてきた。寄宿舎は、労働基準法で規定されているが、これも本来の居住とはいえず、あくまで会社の事業のための施設である。賃貸借契約ではないので、借地借家法上の居住権はない。それゆえに会社の都合、つまり解雇や雇い止めにおいて「追い出す」ことが出来る。これらは、あくまで仕事をするための「一時的な箱」と言える。
住宅は、本来国土交通省の所管であり、担当部局は住宅局である。しかし、住み込み型就労の「箱」である、社員寮も寄宿舎も労働に付随する存在であるので厚生労働省が担当していることになる。この観点からすると「住居と仕事の分離」は、国土交通省と厚生労働省が一体となってひとりの人間の住居と仕事に責任と持つ体制でもある。
しかも、国交省が所管する住宅には、様々な人が暮らす。そうなると厚労省においても障害者部局、高齢者部局、長期入院者の地域移行などの施策においても国交省との一体的施策が必要となる。さらに、法務省ではこの間、刑務所出所者、特に引き受け人が無く、帰住地の定まらない満期出所者の住居の確保が問題となっていた。昨今、再犯防止法が成立したことで逮捕後の不起訴段階、裁判での執行猶予段階での住居確保が大きな課題となっている。これらすべては、住居の確保が前提であり、その上でそこに住む人々に合わせた各省庁の施策が一体的に実行される体制が必要となる。
つづく
この記事へのコメントはありません。