社会

5/27 巻頭言 「参考人証言」その①

 (2018年5月24日、国会参議院厚労委員会の参考人として証言をしてきた。これはその時の原稿である。当日は、時間切れで全部は話せなかった。)
一、 自己紹介
 私は、北九州に本部を置くNPO法人 抱樸の理事長をしております奥田知志と申します。当法人は、1988年からホームレス支援を始め、今年で30年になります。現在ではホームレス、生活困窮、子ども、刑余者などを対象に一七部署にわたる支援活動を行っています。これまでに居宅設置をしたホームレス者は3千人を越えました。半年間の自立支援プログラムで93%が自立し、内58%が就労自立されました。生活継続率も9割を超えています。
 抱樸の活動の特徴を一言でいえば、「制度外」ということです。「制度」が不要と言う事ではありません。この国の制度は、高い専門性を保持しています。
 しかし、なぜか、「人」以上に制度が優先されているようにも思われることがあります。あるいは「制度」の枠組みが「断る理由」となっていることもあります。あらゆる「制度」において、結局大切なのは「人を大事にする」ということです。生活困窮者自立支援制度も本質は、ただそれだけです。
 では、「人を大事に」という時のその「人」とは何を意味するのか。それは「総合的で多様」ということだと思います。そのような「人」を支援するには、一つの制度や分野に留まっていても上手くいきません。例えば、「ホームレス」は、一般には「家の無い人」を指します。しかし、そう単純ではありません。資料①をご覧ください。これは私たちが関わったホームレス者から50人を無作為に選び、ホームレスになった要因を調べたものです。生育家庭の貧困、知的障害、低学歴、不安定就労、多重債務、依存症、犯歴など様々な問題を抱えています。特に未婚4割、相談できる親族無し6割、相談できる人がいないは9割を超えます。個々具体的な問題を抱えると同時に、彼らのほとんどは、孤立していました。
 さらに、生活保護や障がい手帳など制度利用無しが5割です。つまり、5割は制度につながっていたということです。制度だけではホームレス化を阻止できなかったことが伺えます。ここから見えてくる第一の課題は、一人の中に複合的な困難が存在しているということ。第二に孤立の問題。第三に制度や給付だけではダメだということです。つまり、そこには、人がいなかったということです。
 ホームレス支援と言いますが、ホームレスという人はいません。山田さんとか、田中さんとか、すべて名前のある個人です。私たちは、「人を属性で見ない」ということを心掛けてきました。あるいは、「人を制度に当てはめて支援しない」。支援は、個別型のパーソナルな事柄であることを大事にしてきました。
つづく

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