社会

5/24巻頭言「ポストコロナを生きるために その③ 社会の脆弱性・仕事と住宅」

「派遣会社の寮で暮らしていたが、新型コロナの影響で仕事が減った。寮費も払えない状態となり、月末で寮を出るよう通告され途方にくれている。(50代父子家庭)」
「5年程派遣会社の借り上げ寮で生活してきた。新型コロナの影響で仕事が減り、月末での解雇を言い渡され、寮も出ることになった。荷物も多く困っている。これからどうなるのか。(60歳女性)」
2008年のリーマンショックは、9月15日にリーマンブラザーズが倒産し世界同時不況が始まった。そして3か月後の12月末には「年越し派遣村」の事態に至った。今回も同様に「仕事と住居の同時喪失」が発生するのは、これからだと考える。一方で2008年9月の有効求人倍率0.84倍だったのに対して、コロナ直前の有効求人倍率は1.5倍を超えており、失業後も貯金などで一定期間持ちこたえることが出来る人もいると思われる。しかし、しばらくはしのげたとしても、いずれもたなくなる。それが7月なのか、8月なのか。国も住宅喪失を防ぐため「住居確保給付金(生活困窮者自立支援制度)の受給要件を緩和する」など対策に乗り出している。ただ、この制度は「賃貸借契約」を前提としており「住み込み型就労」のような「賃貸借契約ではない物件」に暮らす人への適用は難しい。
3、では、あるべき「仕事と住宅」とは? 私達は、過去へ戻るのではなく、先へと歩を進みたい。私が考えるポストコロナ、あるべき新しい社会の「住居と仕事の分離」を前提とした社会だ。残念ながら非正規雇用はさらに広がるだろう。だから「失業と同時に住居を失うことがない社会」を創造したい。
そこで今回のコロナショックを機にNPO法人抱樸は、「仕事と住居を同時喪失」した人々に向けたクラウドファンディングを立ち上げた。「クラウドファンディング:コロナ緊急:家や仕事を失う人をひとりにしない支援」(https://readyfor.jp/projects/covid19-houboku)。
国土交通省によると全国の空き家は800万戸以上。にも拘わらず入居を拒否され住宅確保が困難な人が増えている。入居を難しくしているのは大家に拒否感情があるからだ。単身化が進み、家族無き時代となりつつある。保証人や何かあった時の相談先であった家族がいない入居者に対して大家の貸し渋りが起きているのだ。
NPO法人抱樸では、全国十都市にパートナー法人を選定し、その法人が空き家をサブリース(借り上げ)し、就労や生活支援付きの住宅を提供するプロジェクトを「コロナ緊急支援」として開始した。各地で10室から15室を準備し、全国150室程度を準備する。今回、ホテルやシャルターを準備した自治体もあるが、そのような仮住まいでは一時的には対応できても再就職を含めた自立は困難である。また、ホテルの出先が「住み込み型就労」であるなら同じことが繰り返されることになる。さらにホテルやシェルターでは、住所設定そのものが出来ない。社会的手続きが不可能となり、例えばマスクも給付金も届かない。今回のプロジェクトは、「住宅」そのものを提供し、自立後は、その場所で暮らせる仕組みを提供したい。
つづく

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