社会

3/26巻頭言「なんちゃって家族」  西日本新聞エッセイ その⑬

【今週のことば】 
(西日本新聞でエッセイと書くことになった。50回連載。考えてみたら、これをここに全部載せると一年かかるので飛ばし飛ばしやります。)
アニメ「サザエさん」は今も続く長寿番組。テレビ放送は1963年に始まっている。磯野波平、フネ、カツオ、ワカメ、フグ田サザエ、マスオ、タラ、そして猫のタマ。7人と1匹の三世代同居世帯のドラマだ。ちなみに波平は54歳。僕より5歳下。苦労された様子が伺える。55歳定年時代の話で波平は現役サラリーマン。サザエさんは24歳。これにも驚く。みんなサザエさんが大好き。日曜日の夕方を楽しみしている。
内閣府男女共同参画局というところが「世帯」に関するデータを発表している(2022年)。1980年、今から42年前、一番多い世帯は「夫婦と子ども世帯」42%、次に「三世帯同居」20%、そして第三位が「単身世帯」20%であった。実に6割以上の世帯に家族が同居していた。
しかし2020年時点では、「単身世帯」38%、「夫婦と子ども」25%、「三世帯同居」は7%しかおらず最下位となった。変化の大きさに驚くが、さらに深刻なのは「40年前の印象」を多くの人が持ち続けていることだ。現在独り暮らしの人も「自分はたまたま単身だが地域には家族同居の世帯が大半を占めている」とどこかで思っている。が、実はそうではない。サザエさん一家はほぼいなくなった。ただ「自己責任や身内の責任」を求める意識は今も強く、身内が健在ならまだしもこの現状では頼る人がいないことになる。無理やり「身内でやれ」と言い続けた結果、「8050問題」(80代の親に50代の子どもが引きこもっている)や「ヤングケアラー問題」などが問題となった。
少子化、人口減少が進む中、単純に「家族を増やそう」と言っても難しい。家族の良さを残しつつも「血のつながり」に固守しない「誰でも家族になれる地域」、「なんちゃって家族のまち」を創る。地域を「大きなサザエさん一家」にするのだ。波平役が5人いても構わない。サザエさんが10人いても大丈夫。すると「サザエさんは愉快だなあ~♪」と皆が歌う地域ができる。希望のまちはそんな「なんちゃって家族」のまちになる。

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