社会

7/1巻頭言「参考人証言」最終回

(2018年5月24日、国会参議院厚労委員会の参考人として証言をしてきた。これはその時の原稿である。当日は、時間切れで全部は話せなかった。)
 私は、「生活困窮者自立支援法」が成立した時の感動を今も忘れていません。自己責任論の嵐が吹き荒れる中で、「絶対に断らない」「あなたをひとりにしない」とこの国は、そして、私たちは約束したのです。それは、社会が無化する中、もう一度社会を取り戻す挑戦だったと思います。この改正案が、与党も野党もなく、早期に成立されることを期待します。以上です。
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 その後、生活困窮者自立支援法改正案は、与党と主な野党の賛成で成立した。参考人としての発言の中で「孤立」のことに触れたが、少し補足しておきたい。今年の1月18日英国で「孤独担当大臣」が誕生した。英国赤十字社など13の福祉団体連携して、昨年「孤独」に関する調査が実施された。英国は、人口6,500万人(日本の半分)であるが、900万人以上が「常に」あるいは「しばしば」孤独感があると答えており、その内3分の2が「生きづらさ」を感じていた。友人や家族と会話が月に1回も無い高齢者が20万人。身体障害者の4人に1人が日常的に「孤独」を感じている。一方、18~38歳では3分の1以上が日常的に「孤独」を感じている。子どもを持つ親たちの4分の1が「常に」もしくは「しばしば」孤独感を持ち、年間400万人以上の子どもが「孤独」についてチャイルドラインに相談している。そして、このような「孤独」が人の肉体的、精神的健康を損なうと警告。「孤独」が、肥満や1日15本以上の喫煙よりも有害とされた。英国政府は、孤独の国家損失を年間約5兆円とした。日本は、人口比(2倍)でいうと損失は10兆円。国際調査における孤立率では、日本は英国の約3倍であり、損失は20兆円ということになる。生活保護に充当される年間の予算は約4兆円であり、しかも、最低生活基準以下で暮らす人々の2割しかカバーできていないといわれている。もし、この損失分(予測)が生活保護に回れば、ほぼ困窮者全体がカバーできることになる。三木清は、著書「人生ノート」において「孤独」についてこのように述べている。「孤獨といふのは獨居のことではない。むしろひとは孤獨を逃れるために獨居しさへするのである。孤獨は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の『間』にあるのである。」
 今後、日本社会は一層孤独の問題に直面することとなる。しかし、正直に言うと孤独の問題を大臣、つまり国家に補ってもらう気持ちにはならない。国家が人の孤独を埋める時、それは全体主義国家の到来を意味するだろう。そうではなく、孤独を埋めるのは人であり、私達の出会い方、共に生きるその生き方なのである。イエスは、インマヌエルと呼ばれた。それは、神が共にいてくださるという意味であった。そして、それが救いの本質なのであった。「ともかくつながること」。それは、今日の困窮者支援の本質的事柄に他ならない。それは、すなわち宣教の課題である。

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